Viz for Social Goodというボランティア団体の、日本グループのサブリーダーをやっております。
VfSG JapanのTECHPLAYページ: https://techplay.jp/community/vizforsocialgood
Viz for Social Goodはざっくり言えば「データ可視化で社会貢献」を目的としています。
様々な組織やNPO等からデータを頂いて、そのデータを分析・可視化することにより、世界をより良いものにする助けとなろう、という活動です。
(UNICEFさんや国連さんからデータ提供の実績もあります)
過去プロジェクト一覧: https://www.vizforsocialgood.com/join-a-project
それなりの時間をかけて一つの作品を提出するのですが、今まで制作過程の振り返り等をしておらず、作りっぱなしだったなぁと思うところがありました。
今回のプロジェクトから簡単な振り返りをしようと思います。
(先にお断りしますが、おそらく長くなります。簡単に振り返っても長くなるんです。)
作成したVizは以下からダウンロードできます。
【初期構想】
今回のプロジェクトは「Japan Food Bank」というタイトルで、日本の貧困問題とフードロス問題がテーマでした。
プロジェクトの詳細はこちらから(ページ下部に日本語訳があります)。
上記のプロジェクト詳細と簡単なデータ探索から、以下の6点を先に決めました。
(3点目は書くのが面倒になりサボりましたが)
データ可視化のフレームワーク、作業前のポイントリストの作成をずっと練っており、これは試作みたいなものです。
作業後に見えてくることもあると思いますので、あまり厳密にせず、やや広めに作っています。
また、上から順番に書いているというよりは、ある程度は並行または前後して作っております。最終的に定義されたものが意味あるものであれば、何でもいいかなと。
ゴール
最初に「(このデータ可視化で)達成したいこと」を定義しました。
こちらはプロジェクトページのCall-to-actionと、全国フードバンク推進協議会さんのページから主に決め、あとはターゲットを誰にするかも含めた感じです。
全国フードバンク推進協議会: https://www.fb-kyougikai.net/
今回は以下の4つを達成したいゴールとしました。
企業からの寄付、寄贈
フードロス問題と貧困問題の可視化(あまり認知されていないので)
上記の2問題の認知獲得
寄付だけでなく人的資源も獲得(ボランティア的な要素)
オーディエンス
この可視化を誰に見てもらいたいか、誰を想定して作るかを決めました。
見る方によってモチベーションや背景知識、見せ方が異なってきますので、ここもある程度は具体的に決めた方がいいかな、と思っています。
あとは、それによって作成するデータ可視化のサイズ、フォント等のレイアウトも変わってくるかなと。
今回は以下2つをオーディエンスとしました。
企業の人または企業や組織の広報担当者
(認知が目的でもあるので)ある程度は一般人向けに作成。ただしサブターゲット。
ちなみに今回、企業に寄せて自分は作成を進めておりました。
SDGsや社会貢献のトレンドを加味したこと、寄付寄贈の量的な意味でのインパクトが大きいです。
プロジェクト背景やコンテクスト
書いてまとめるのが面倒でサボってしまいましたが、データやデータ可視化の文脈理解は重要だと思います。
挙げればキリが無さそうですが、例として今回の場合は以下が挙げられると思います。
フードバンクとは何か
なぜフードバンクが必要か
日本の貧困問題の現状と課題
フードロス問題の現状と課題
フードバンクが抱えている問題、ニーズ(食料か金銭か人的資源か)
これら問題に対するトレンドや社会情勢
解決したい問題に対するビジョンがある程度クリアになってから分析を始める方が、アウトプットへの道筋やストーリーが明確になると思います。
「伝えたいメッセージは何か」も、このあたりから着想を得ます。
背景理解について、データ探索と関連トピックの調査の両方を含みます。
あとは、先程の全国フードバンク推進協議会さんのページを探索しました。
利用可能なデータ
ここは単に利用可能なデータの羅列なので省略。
どんな問いに答えるべきか
データ可視化を通して答える問いのリストアップをします。
実質的に「何を可視化するか/何を可視化に含めるか」です。
これら問いは、最初のポイント「ゴール」を元にして大体作成されます。
今回は以下をリストアップしました。
貧困の現状はどうなっているのか
フードロスの現状はどうなっているのか
フードバンクはどのように上記の問題に対して機能するのか
フードバンクは何を達成したか
オーディエンスにとってフードバンクを支援するモチベーションは何か
フードバンクはどこに貢献して、どこを残しているか
「問いの粒度が大きくないか」というご指摘、ごもっともです。
一方で粒度の細かい問いはデータ可視化の過程で生まれてくることが多く、最初は問いの「軸」を決めている、という感じです。
可視化の中で上記全てに答えなければならない、ということはありません。
データや可視化サイズの制限で難しいものも出てきます。
その場合は優先順位をつけ、多少の取捨選択をします。ただし残ったものが「ゴール」を達成するために使えるかどうかは確認します。
KPI/主要数値
文字通りですね。何の数字を使って可視化するかです。省略します。
【設計図をざっくり作る】
上記6点を定義したら、ざっくりとしたフレームワークを作りました。
PDFでのダウンロードのしやすさ、印刷しやすさ、スマホ等での見やすさを加味して「A4タテ」サイズで作ることに決めました。
結果的には、要素が多すぎました。
最初は「アレも入れたいしコレも入れたい」で作ってるので、要素がやや多めです。
データ可視化を作っている過程で「コレやっぱ要らない」「アレはもうスペース的に無理」となってきます。
ただ、最初はやや想像力に寄せておいて、後から引き算すればいいかなと思います。
「最初から極端に要素が多いな」という場合は、おそらく初期構想をもっと絞れます。そちらに戻ってください。
【とりあえず作ってみる】
上の設計図に沿って、まずは作ってみました(途中経過です)。
この後に思ったことは
タイトルが長すぎる。
縦に全て並べてしまうと「貧困とフードロスの現状」と「解決策としてのフードバンク」という構図で作りたいのに、独立した3つのテーマのように見えてしまう。
青色いらない。色を最小限にする。
その後、以下のようになりました。それっぽくはなってますね。
こちらの作成後に思ったことは以下の事項です。
文字小さい。もう少し情報を取捨選択してフォントサイズを大きくする。
整列の原則を考えると、1段目の縦ラインと2段目の縦ラインをそろえたい。
自分の伝えたいメッセージ「フードロスの50%以上は企業による」に対して、Sankey Diagramは最適解ではない。
特に3点目について、こちらは余分な情報が多いことによります。
フードロス(Food Waste)についてのメッセージなのに、単なる廃棄物(Food Disposals)まで含める必要があるのか、と悩みました。
その後、以下のようになりました。
おおむね出来たかなと思い、英語添削のために英会話の先生に持っていきました。
そこで以下のフィードバックを頂きました。
2段目のマップは自分には分かりづらい。フードバンクが海か空の上にあるように一瞬思える。
# of boxes/cansという指標は直感的でない。
上でずっと全体感を話しているのだから、ここも県別にこだわらずに全体感でいいのでは?
そもそもフードバンクの活動内容をプッシュして、周知した方がいいかもしれない。
ここで強く思ったのが「自分はデータを良く知っていたから、このマップでの可視化に違和感を覚えることができなかった」ということです。
フードバンクという「概念」から、各地域という「具体」に、地図という「具体」上で線を引くという行為、改めて考えるとメチャクチャですね。
また、この時点での伝えたいメッセージは「貧困率の高い地域に、フードバンクはまだ十分な支援ができていない(のでサポート下さい)」でしたが、この可視化はそのメッセージを最適解で伝える作りでなかったように思います。
初めて可視化を見る人のフィードバックは恐ろしく強力ですね。
自分のバイアスを壊してくれます。
【そして提出作品】
最終的に、以下を提出しました。
比較のために、最初と最後を横に並べます。
最初と比べたら大分クリアなものが出来たのではと思っています。
ですが、ここから反省会です。
フードバンクのデータをあまり使えなかった
全国フードバンク推進協議会様から、フードバンク支援を受けられた方によるアンケートデータや、支援実績データを頂いておりました。これらを使えなかったですね。
このあたりのデータを使えば、もう少し踏み込んだ
「フードバンクとは何か」
「フードバンク利用者はどういう方々か」
を伝えられたのかなと。
人間像が見えてくれば、もっと親近感や認知の面で可視化をサポートできたようにも思います。
(サイズ上の制限もあるものの)可視化をあまり作れていない
最終的に使用したワークシートは2枚です。
もちろんワークシートの数は可視化の質と関係ありませんが、もう少し可視化を作ってストーリーを強くできたかもしれない、と思うところはあります。
Viz in tooltip等も考えましたが、結局A4でプリントまで意図しているので、静的に作ることを優先しました。
あまり華やかに作れなかった
認知目的を考えると、もう少しファンシーに作っても良かったかもですね。
特に他の方の作品を拝見していると、目を引く美しさが大切だなと思います。
Line Chartの色もPoverty Rateの数値と対応させても良かったかもしれない
文字通りです。色だけ見ると、9%も18%も同じに見えますね。
書いている時点で思いつくのはこのあたりです。
今から直して再提出もいいですが、一回提出しましたので、そこで切ります。次回に生かします。
【最後に】
長い記事にお付き合いくださり、ありがとうございました。
感想戦と、その時々のキャプションを使ったレビューは大切ですね。
今回は全体的に作品提出数も多く、日本からの提出も多いように思いました。
Viz for Social Good盛り上がり続けています。もしご興味をお持ちいただけましたら、次のHackathonでぜひお会いしましょう。
ご質問等はTwitterまたはLinkedinまでよろしくお願いします。それでは。