雑談回です。
「データ可視化」という言葉が認知され、市民権もどんどん得られるようになり、書籍等も多く出るようになりました。
個人的には、この文章を書いている2019年5月末時点では、書籍ラッシュのようなものさえ感じています。
一方で「データ可視化って要はプレゼン術でしょ?」というような趣旨のコメントも見かけます。
個人的には違和感こそ覚えつつも、完全な否定はできない、という印象でした。
実際にデータを使うプレゼンをする機会は増え、その際にデータ可視化のテクニックは大いに役立ちますし、実際に活用もされていると思うので。
それでも、納得しきれない部分がありました。
ということで、今回のテーマは「データ可視化はプレゼン術か」です。
自分の問いに対して自分で答えるため記事でもあります。お付き合い下さい。
このシリーズの想定ユーザーは以下の方々です。
データ可視化ツールには慣れてきたが、何をどう可視化したらいいか分からない
いまひとつ自分の可視化がイケてない気がする
可視化のプロセスが分からない
参考書は以下に挙げます。主にノンデザイナーズ・デザインブックを参考にしていますが、データ可視化の観点からMakeoverMonday本も参考にしています。
あとは、自分のデータ可視化の原点であるStorytelling With Dataも参考書として挙げておきます。
(日本語版ありました)
このシリーズで使用したTableau Workbookは以下からダウンロードできます。
(Disclaimer)
ここで書き表すことは絶対ではありません。データ可視化を集中的にやり続けている人間の、一意見として捉えて下さい。
【そもそもデータ可視化ってなんだっけ】
基本に立ち返ります。データ可視化をどう定義するべきか。
データ可視化は「単にデータを見えるようにすること」ではない、という点は直感的に分かっていました。
ということで、どのように定義するべきか、という点を調べました。
個人的に、Tableau社の以下の定義が簡潔で良いかなと思います。
Data visualization is the graphical representation of information and data.
By using visual elements like charts, graphs, and maps, data visualization tools provide an accessible way to see and understand trends, outliers, and patterns in data.
要点として、もちろんデータ可視化は「データを視覚的に表現するもの」ですが、
大切なのは「データ可視化はデータを見て理解する」手助けをしてくれる、という点です。
逆に言えば、必ずしも「データが見えるようになった」=「データが理解できるようになった」ではないことを示唆しているかもしれません。
データを「見えるように」かつ「理解できるように」して、はじめてデータ可視化と言えるのかもしれません。
したがって「データ可視化ってなんだっけ」という問いに対して、自分の言葉で一言でまとめると以下となります。
「データ可視化とは、データを視覚的に理解させるものである」
【誰が見て理解するのか】
上記のようにデータ可視化を定義するとき、考えたのは「誰に理解させるものか」という点です。
この点は可視化の目的や意図によるのかなと思います。
例えばExcel等での集計値を可視化する場合、可視化によってデータを理解してもらう相手は「他者」になります。
この場合には、確かにプレゼン術的な要素が強くなるかもですね。
一方で、自分のような「データ可視化によってデータを分析する」人間にとっては、
もちろん最終的には他者に分析内容を共有するわけですが、
第一オーディエンスは「自分」になります。
この場合、データ可視化のプレゼン術(他者に情報を伝える技術)よりも先に
「データを正しく、効率的に理解しながら分析する方法としてのデータ可視化」に焦点が当たります。
そのあとにプレゼン術的な意味でのデータ可視化技術に焦点が当たります。
思うに、自分の違和感の正体はここにあるのかなと。
もちろん最終的に他者への共有のためのデータ可視化は行いますが、
それより先に「自分」が「データを視覚的に理解する」ことを念頭にして「データ可視化」という言葉を使っているから、齟齬が生じるのかなと。
まとめると以下みたいな感じでしょうか。
可視化を使ったデータ分析者でない人にとっては、データ可視化=プレゼン術
可視化を使ったデータ分析者にとっては、データ可視化=分析手法(ただし分析者は最終的に分析結果の共有のため、プレゼン術的なデータ可視化もする)
ちなみに自分のデータ可視化コラムシリーズは、今のところプレゼン術寄りで書いていますが、分析寄りのことは今後書きます。
今はデザインの話が続いていること、ご了承下さい。
【「データ可視化」という言葉が分析っぽく聞こえない?】
Data Visualizationの日本語訳が「データ可視化」なわけですが、Data Analyticsがまあ盛んだった欧米では、そもそもData Visualizationという言葉にAnalyticsの要素が含まれているかもですね。
実際にWikipediaでは、思いっきりAnalyticsに言及されていますね。
一方で日本語の字面だと「見えるようにすること」という印象が強いのかなと。
(あるいはデータ分化の成熟度の側面かもしれません。)
その意味では、個人的にVisual Analytics(視覚的データ分析)という言葉が気に入っているのですが、もう少し認知されていくといいなぁというところです。
「ビジュアルアナリティクス」とは何か、については以下の記事がよくまとまっていると思います。
自分も今後は自己紹介で「Visual Analyticsやってます」と言っていこうかと考え中です。
ただ、SASさんにそういう商品があるみたいですね・・・
【「BIツール」も分析っぽくなくなった?】
ここまで書いて「データ可視化って言葉が分析っぽく聞こえないから、プレゼン術と思われるのかもしれない」という考えに至ったわけですが、「BIツール」も同様の問題を抱えているかもしれません。
Tableau自体も「セルフBIツール」という形で、長らくBIツールのトップを走っていたように聞きました。
一方で、マーケットが育ち、いまでは多種多様な「BIツール」が存在しています。
以下の図はいわゆるGartner Magic Quadrantです。
この多様なツールは価格(体系)や機能がもちろん違うわけで、中には「(定形)帳簿作成ツールとしてのBI」も、Tableauのような「データと対話するかのように分析もできるBI」も「機械学習の要素も入れた、自動でインサイトを教えてくれるBI」もあるように見えます。
3番目は個人的に気になっているのですが、問題は1番目と2番目。
「(単に)データを見せます」というBIツールとTableauは、コンセプトや分析のCapability等が全く異なるわけですが、両者とも「BIツール」ですね。
こうなってくると「BIツール」という言葉への認識は人によって大きく異なる可能性もあり、TableauをVisual Analyticsにゴリゴリ使うユーザーからすると
「BIツールって帳票作成ツールだよね?」
というような話に首を傾げることになります。
なので、Tableauみたいなツールも「Analytics Platform」みたいな言い方が差別化の意味でもいいのかなと思いつつ、Tableau社の理念的に(専門的な)分析ツールとして受け取られうる言葉は良くないのかもですね。
【まとめ】
長くなりましたが、「データ可視化はプレゼン術か」という問いに対する自分の答えは
「データ可視化」は分析手法とプレゼン術の両方です
となり、さらに言えば
分析でデータ可視化を使っている人間からすると、分析のニュアンスではVisual Analyticと言った方がいいかもです
分析的BIツールも、何か別の言葉が欲しいです
みたいな事も言いたくなりました。
この話、おそらく多様な意見があると思います。
一個人の一意見としてご了承ください。
ご質問等はTwitterまたはLinkedinまでよろしくお願いします。それでは。